セーブル/Porcelaines des Sèvres

フランスが誇る高貴で気品あふれる陶磁器であるセーヴル焼。セーブルはフランスの国立セーヴル磁器製作所であり、
作品としての品質にこだわり、生産量も少なく大変貴重な焼き物です。
イル=ド=フランス地域圏オー=ド=セーヌ県に属するセーヴルで生産される磁器。
セーヴル窯の誕生は1756年。

セーブル焼はフランスでも最も高貴で気品あふれる高価な陶磁器ではないでしょうか。
国窯であるセーブルは、その一つひとつが最高レベルの品質で製造されている為、
製造量が極端に少なく、しかもその殆どがフランス国家機関で使用される他、
諸外国への贈答品としての役割を持っています。
その為、別名「幻の陶磁器」と言われるほど高価で貴重な陶磁器です。
セーブル焼きの特長は、クラウデッドブルー、ファットブルー、アガサブルーなどの
「セーブルブルー」と呼ばれる独自の技法を用いた、
独特の美しい青の色調や、ロココ独特の優美な金彩の装飾です。

その焼き物を製造するセーヴル窯が『王立セーブル製陶所』として
フランスが誇る代表的な陶磁器を生み出すようになったのは、
その前身であるヴァンセンヌ窯(Manufacture de Vincennes)の存在がありました。
ヴァンセンヌ窯は、日本磁器の伊万里焼や、柿右衛門磁器の写し上絵付けをした
軟質磁器で知られていたシャンティイ窯(Porcelaine de Chantilly)の
クルード・アンベール・ジェラン(Claude-Humbert Gerin)、
デュポア兄弟ロベールとジル(Robert et Gilles Dubois)らが、
1738年、フランスの大蔵大臣オリ・ド・フルヴィに招かれ、
パリ東部のヴァンセンヌ城内に窯を構えたのが始まりです。

その後、1756年にヴァンセンヌ窯は、才色兼備で宮廷のサロンで
啓蒙思想家や芸術家との交流も深かった、ルイ15世の公妾である、
ポンパドゥール夫人(Madame de Pompadour)を
中心としたフランス政府からの援助を受け、パリとヴェルサイユ宮殿の中間に位置する
セーヴルの町に窯を移転し、フランス国内から優秀な化学監督、装飾、彫像、絵付け等の
最高のスタッフが集められ、後に王立窯『王立セーブル製陶所』となるセーブル窯を開きました。

フランスでは当時、アジアの主に中国や日本で作られていた頑丈で薄い磁器を
製造するために必要である、鉱石のカオリンを入手することが難しく、
セーブルでは軟磁器といわれる磁器を模して作られた焼き物が作れていました。
しかし、国を挙げてカオリンを探し、1768年遂にリモージュ近郊の町
サンティリエ・ラ・ペルシュ(Saint-Yriex-La-Perche)でカオリンが発見され、
フランスでカオリンを入手することができるようになり、セーブルでも磁器が作られるようになりました。